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それは「美味い!」から始まった 庄内・山菜との出会い旅編 ~山菜名人を訪ねて~

庄内の春の味覚といえばそう、山菜ですよね!今回モッシェド編集部は山菜名人のもとを訪ね、山菜の採集、そして育成の現場を突撃レポートします!

May 20, 2025

春の風にふわっと混じる、どこか懐かしい土と草の香り。

その匂いに「もしかして…」と気づくようになったのは、庄内に移住してからのことでした。スーパーや産直に並ぶ山菜の数々。フキノトウ、コゴミ、タラの芽、ワラビ…。

タラの芽の天ぷらは絶品!

庄内地域に移住してまだ間もないため、私はこれまで山菜に縁がなく、正直、「ちょっとクセがありそうで苦手」なイメージでした。

でも、食べていくうちにどの山菜も個性的で、だんだんその味わいが「癖」になっていく。

春になると体が山菜を求めている……そんな不思議な感覚に。

赤コゴミはおつまみにぴったり!
「おいおい、このヘンテコだけれどやたらと美味しい食べ物、「山菜」って、一体なんなんだ?」

どんな場所で、どんな風に生えているのか。

それぞれの山菜のもっとも美味しい食べ方とはなんなのか。

急に気になりだしたこの存在を、もっと深く知りたいと思うようになりました。

まずは“山菜のプロ”に会いたい!

そう思い、ネットで地域の山菜情報を収集。

調べてみると、「山形県山菜・きのこ振興会」なる組織があることを発見。

勢いのまま連絡すると、なんと山菜のことに詳しい名人を紹介していただけることに!

山形県山菜・きのこ振興会

さっそく紹介いただいた名人へと連絡、これで取材できる……と思いましたが、

初めての電話で張り切りすぎたせいか、「いや~、今はもう現場を離れていて…」とやんわりお断りされてしまいました。

でもその方が教えてくれたのが、庄内総合支庁森林整備課という場所。

「そこに行けば、山菜に詳しい人を紹介してくれるかも」

そうと分かったら…これはもう行くしかありません!

山菜に詳しい人を紹介してください!

思い立ったが吉日。

その日のうちに突撃訪問した森林整備課で「山菜について知りたい、発信したい」と熱弁する私。

平日の真っ昼間……今思えば完全なエキセントリックムーブにも関わらず、

親身に話を聞き、「それならば…」と首を縦に振ってくれたのが普及担当の荘司さんと齋藤さん。

後日、帯同のうえ、直接山菜名人を紹介してくださることに、

ついに“山菜の門”が開かれた気がしました。本当にありがとうございます。

山の入り口で、出会ったのは “ガチの人”

当日、他のモッシェドメンバーともに案内に導かれ、たどり着いたのは鶴岡市のとある山のふもと。

そこには、無口でちょっと眼差しの鋭い男性が立っていました。

「きっとこの人だ……すごく山に詳しそう」

なんというか、いかにもな空気をまとっています……ビビリな私はちょっと萎縮。

しかしそんな私の緊張を察してか、「で、どんなこと知りたい?」と優しく話しかけてくれました。

この方が、紹介いただいた庄内山菜研究会の“山菜名人”土岐さん。

山ではどんな山菜が採れるのかとたずねると、

「フキノトウでしょ、それとコシアブラ、あとはタラの芽…」

と次々に山菜の名前が飛び出します。

その中には「ハリギリ」というはじめて聞く山菜の名前もありました。

葉の形がカエデに似て、棘のある枝を持った木で、タラの芽のように新芽を天ぷらにして食べると美味しいのだとか。

「まだまだ知らない山菜があるのか…」話を聴くうちにテンションが上がり、勢いあまって、

「私も山に入って、山菜を採ってみたいです!」

口に出してハッと気づく、失言だった。

土岐さんにとって神聖な山に、ズケズケ入れてくれるわけがない。

ましてや初対面の得体の知れない連中を...。

リスペクトに欠けた発言をして怒らせてしまったかも、と焦っていると、

「おう、いいよ!行こう」と快諾してくれました。

その器も、山のように大きいようです。

いよいよ、山菜が生い茂る山へ

まるで“畑”のような山

土岐さんの軽トラの後ろを追って山の中へ。

案内された先は、雑木林というよりまるで“整った農園”。

「あれもこれも全部コシアブラだよ」と土岐さん。

そう言われても、そもそもコシアブラがどんな風に生えるか分かっていない私。

土岐さんの指が示す先を見ると、特徴的な5枚の葉を付けた白く細い木が見えました。

立派に生長したコシアブラの葉。残念ながらもう旬を過ぎていました。

コシアブラはタラの芽と同様に若芽が山菜として食されていて、その豊かな香りと上品な味わいから「山菜の女王」と呼ばれているのだとか。

旬は4月下旬頃までで、私が訪れたのは5月上旬と少し遅かったため、芽からはすっかり葉が伸び、食べられる時期が過ぎていました。

食べてみたかった…残念そうにながめる私に、土岐さんは「こっちはまだ食べられるから」とタラの芽を摘み取って渡してくれました。

樹液もしたたるとれたて新鮮なタラの芽

春の訪れを告げるフキノトウ畑

そこから奥へと進んでいくと、斜面いっぱいにフキが生い茂る場所に到着。

太い葉柄が食用になるフキ、その花芽は春の山菜としておなじみのフキノトウです。

「3月の終わりごろにはここ一面に、ブワーッとフキノトウが芽吹くんだよ」

と語る土岐さん。早春、まだ雪の残る斜面に顔をのぞかせるフキノトウの姿が目に浮かんできます。

山の中、一面のフキ畑が目の前に広がります
ところどころにクマよけのトタンの板が付けられていました。

ここには栗とあつみかぶも植えているそうで、最近の悩みのタネはイノシシに荒らされること。

どうしようかと悩むなかで試しに周りにタラノキを植えてみたところ、

木に生えるトゲを嫌がるためかイノシシがあまり近寄らなくなったと笑います。

野生の脅威に対して、自然の力で対抗。山を熟知した土岐さんならではの対処法です。

足元いっぱいに生い茂る山菜に感動

さらに山の上へと案内してくれる土岐さん。けもの道をずんずん進んでいき、その後ろを遅れないように必死についていくモッシェドメンバーたち。

目の前が開け、どうやら山の中腹までたどり着いたようです。

「足元を見てごらん」

そう言われて目を凝らすと、産直でよく見るあのおなじみの姿が。

くるっと丸まった先端が特徴的な山菜、ワラビがあたり一面に生えていました。

「採っていいよ」と言われ、手を伸ばす私。庄内に住んで初めての山菜採り体験です。

「普段産直に並んでいる山菜も、こんな風に山の中で育っているのか…」。

今まさに山の恵みをいただいている、そんな感動が胸にこみあげてきます。

庄内山菜研究会の土岐さん、森林整備課の荘司さん、
貴重な機会をありがとうございました!

土岐さんの山菜、おうちでいただいてみた

いただいた山菜を家で調理してみました。

まずはタラの芽。揚げると、サクッという音と一緒に立ちのぼる春の香り。

ほろ苦くて、どこか甘い。これぞ山菜の醍醐味。

ワラビはあく抜き後、だし醤油で軽く漬けていただきました。

「おお、これは美味い…!」

奥行きのある味わいと豊かな香り。

そしてなにより、あの山で聞いた話を思い出しながら食べるから、格別なんです。

作り方はコチラ!

山菜は“買って”食べるのがオススメです

「山に入って採ってみたい」と思う気持ち、よく分かります。

でも、土岐さんは言っていました。

「山菜は“資源”なんだよ。むやみに採ったらもう来年は生えてこないかもしれない」

実際、気候の変化や採る人の高齢化で、山菜の量は年々減少しているそう。だからこそ、

きちんと管理された山から収穫されたものを、産直などで購入するのが大切なのだと。

「それに、市場に出る山菜って型もそろっていて味も安定しているしね」

……なるほど、プロの話は説得力が違います。

【取材を終えて、土岐さんからのメッセージ】
「自分は定年退職後、趣味として山菜に取り組んできた。そういう人たちが今後、地域の山菜を守り育てていくキーマンになると思っている。定年退職して時間があって、山や竹林の管理に関心があるという人はぜひ森林整備課に問い合わせしてほしいね」
山形県庄内総合支庁 産業経済部森林整備課 連絡先:0235-66-5537

庄内の豊かな自然とともに、古くから地元の人々に親しまれてきた山菜は「地域の宝」。

モッシェドでは今後も、地域の山菜の魅力を伝える企画を行っていく予定です。

春の味が気になるあなたへ。

この物語は、ちょっとだけ続きます。

この記事を書いたヒト
エンドウ ジュン
ライター/カメラ:酒田在住。
庄内の美味しい食べ物をこよなく愛しています。
故にダイエット中ですが結果は出ていません。
この記事を書いたヒト
石澤 マナカ
デザイナー/ライター:純度100%の鶴岡市民
「何事も見て・やってみる」がモットーです。
民芸品や立体造形に興味があります。
この記事を書いたヒト
長澤 久美
ライター:酒田在住の一児の母、子育て奮闘中
大食いなのでいろんなお店へ通っています。
いろんな人の話を聞くのが好きです。
この記事を書いたヒト
庄司 あやの
デザイナー/ライター:生粋の酒田っ子。
食べることが大好きなため食事制限を諦め運動中。
自然と動物に毎日夢中。
この記事を書いたヒト
佐藤 太一
ライター/カメラ:3年前に仙台から移住。
住居の目の前がお墓で夜が少し怖い。
ビジネスホテルでお湯を沸かすのが好き。
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