MOTCHED!SHOP!
季節の花々や植物、そしてこだわりの雑貨が並ぶSunLipsは「何か贈り物をしたい」人に支持されているお店。その人気のヒミツとは?お店を訪ねてお話を聞きました。
October 8, 2025
大切な人に、何か心のこもった贈り物をしたい。
そんなとき、自然と頭に思い浮かぶものといえば…
「花」なのではないでしょうか。
花をもらって嬉しいのは、贈ってくれた人の気持ちを可憐な花々がそっと伝えてくれる……そんな風に感じるからだと思います。
今回は、いつの時代も私たちの心をとらえる「花の贈り物」を束ねる人のお話です。
鶴岡駅のほど近くにある、花と雑貨のお店「SunLips(サンリップス)」
扉を開けると花々や植物たちが一斉にお出迎えしてくれます。
季節の花とともに、オーナー自ら見つけてきたこだわりの植物やアンティーク調の雑貨、そして地元の作家さんが手がけた逸品が並ぶ店内は、さながらおとぎ話に出てくる室内庭園やアトリエのよう。お気に入りの品々が集められた「特別な場所」に招待してもらったような気持ちになります。
お話をうかがうのは、オーナーの五十嵐さん。
こんな素敵なお店を手がけているのだから、きっと小さい頃から花屋さんになりたかったに違いない…
そう切り出したところ、「いえ、全然そんなことはなくて」と笑います。
「子どもの頃はおばあちゃんと一緒に山に行ったり海に行ったりして、お花というよりも自然の中で遊ぶのが好きでした。花屋に興味を持ったのは、それこそ就職してからなんです」
花屋で働き始めたきっかけも、知り合いの女性から「うちの花屋で働くことに興味ない?」と声をかけられたからなのだそう。その一言がきっかけとなり、一気に花の持つ魅力に引き込まれていきます。
「花の仕事って、お客さんと関わる仕事でもあるんですよね。自分が手がけた花を買ったお客さんが嬉しそうに笑ってくれたとき、私もすごく幸せな気持ちになりました」
お祝いだったり、ときには悲しいことだったり、花を求める理由はさまざま。
花を通じたお客さんとの交流に、どんどん夢中になっていったそうです。
五十嵐さんのお話を聞いていると「花屋という仕事にやりがいを見出し、しっかり経験を積んでから自分のお店を持ったのだろう」という印象を受けました。
しかし、独立に至ったきっかけを聞いたとき、それまでのイメージが一気に吹き飛びます。
「2人目の子どもがちょうど生まれるときに、勤め先が倒産しました」
さらりと語られた言葉に、私は思わず息をのみます。
しかし五十嵐さんは「転機というのはすごいタイミングでやってくるもの」と、笑って続けます 。
「今、振り返ると不思議なんですが、だからといって子育てしながらパートで働こうとは当時は微塵も思わなくて。いずれは自分のお店を持ちたかったので『じゃあ自分でやってみよう、そのタイミングが今だ!』って感じでしたね」
当時は20代前半、まだ人生経験が浅いからこそ怖いもの知らずだったという五十嵐さん。このピンチをチャンスだと捉えます。
「開業し初めの頃は、それこそ無心でひたすら仕事に打ち込んでいました。一番大変だったのはお金の面ですが、身近な人たちの助けもあってなんとか乗り越えられたんです」
嵐のような開業から、今年で19年。
「SunLips」は、今や「何か贈り物をしたい人が『ここに来たら何とかしてくれる』って思ってもらえるようなお店」として、多くの人に愛されています 。
その理由は、五十嵐さんの姿勢にあります。単に商品を売るのではなく、お客さんの「贈りたい」という気持ちに寄り添い、一緒になってどんなものが良いか考えていきます 。
お客さんとのやりとりで印象に残ったエピソードを尋ねると、「いっぱいあるなぁ…」と、目を輝かせながら記憶の扉を開いてくれました 。
「プロポーズで花をお求めになる方も多くいらっしゃいますね。聞き過ぎなのかもしれないけれど、『どこで渡すの?』とかシチュエーションを教えてもらって、一緒になってドキドキしながら選んだりします」
「自分の誕生日に花を買いに来た若い学生さんがいて。自分用かなと思いきや『育ててくれたお母さんに感謝を伝えたい』って。それは素敵!って思って、どんな花がいいか一緒に選びました」
一人ひとりの物語を、自分のことのように語る五十嵐さん。
贈り物をしたい人がこの店を訪れる理由が、少しだけわかったような気がします。
「贈り物用」としてあらかじめパッケージされたものではなく、お客さんの「贈りたい」という気持ちに寄り添い、一緒になってどんなものが良いか考え、想いとともに花を束ねていく。
五十嵐さんの人柄がそのまま、この「SunLips」というお店なのだと実感しました。
そして、最近ではSDGsへの取り組みやワークショップにも力を入れているそうです。
和紙のレターセットは、西山町にある「月山和紙」の紙漉き職人、渋谷さんのご協力のもと誕生しました。
乾燥させた花を渋谷さんの手によって和紙へと漉き込んでもらうことで、大切な花たちを無駄にすることなくアップサイクルしています。
大切な人へ手紙を送るときに、さりげなく「花」も添えて。そんな素敵な心遣いが感じられる逸品です。
ワークショップも単にフラワーアレンジメントをするのではなく、花を通じて季節の移り変わりや地域性を感じられるものにしたいと話す五十嵐さん。
「定期的に『花茶会』という催しを開いています。例えば6月だったら涼しげなガラスの花器を使って生け花をしたり、8月は大山の蓮を使ったお茶を味わったりと、その季節ならでは草花を通じて『特別な時間』が体験できるような、そんな場づくりに力を入れていますね」
今回の取材を終え、あらためて「花」の持つ不思議さと魅力に気づかされました。
嬉しいときも、悲しいときも、出会いも、そして別れも。
気がつけば、いつもそこには花がありました。
花がこんなにも愛されるのは、どんな高価な贈り物よりも、贈る人の「心」をうつし出してくれる、そんな存在だからなのかもしれません。
「私にも、誰かに特別な花を贈るようなことがもしあるのなら、そのときはこのお店で選びたい」
どこか気恥ずかしくも、それでいて温かいような気持ちが心にじんわりと広がりました。
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