MOTCHED!SPORTS
11/15(土)から11/26(水)かけて開催される「東京2025デフリンピック」に、酒田市から3人の選手が出場します!競技にかける意気込みと、この大会を通じて注目してほしい「デフスポーツ」についてお聞きしました。
October 15, 2025
デフリンピックとは、耳が聴こえない・聴こえにくい(deaf:デフ)人のための世界規模の総合スポーツ競技大会です。1924年にパリで行われてから100周年となる今大会は、日本で初めての開催となります。
そんな記念すべき大会に、酒田市からは齋藤京香さん、齋藤丞(たすく)さん、齋藤心温(しおん)さんの3人の選手が出場!
京香さんと丞さんは姉弟であり、心温さんとはいとこ同士という強い絆で結ばれた3人。
それぞれの競技にかける想い、そしてデフリンピック出場に向けての意気込みを聞かせていただきました。
競泳で世界に挑む京香さん。2017年、2022年に開催されたデフリンピックに出場し、2022年の競泳女子100メートルバタフライでは金メダルを受賞されました。今大会では二連覇を目指します。
京香さん:「水泳を始めたのは小学校1年生の頃でした。プールで遊んでいるところを母が見ていてくれて、私がすごく楽しそうだったからと水泳を習わせてくれたんです」
当時はデフスポーツの存在も知らず、健聴者の子たちと一緒に練習していたという京香さん。大きな転機が訪れたのは中学校2年生の時でした。
京香さん:「いつも通り水泳教室に行くと、当時のコーチから『日本デフ水泳協会からメールが来ているよ』と言われて、そこで初めてデフスポーツのことを知りました」
メールに書かれていたのは「世界大会とアジア大会の標準記録を突破しているので、デフ水泳の日本代表として出場してほしい」という内容だったそうで、「あまりにも急だったので、最初はだまされているのかと思いました(笑)」と当時を振り返ります。
京香さん:「いきなり世界が変わった感じでしたね。驚きが一番大きかったですけれど、自分と同じ障がいを持って水泳をやっている人たちと一緒に世界大会に出られるんだって思うと、だんだん楽しみな気持ちが強くなりました」
そこから世界大会やアジア大会を経て、高校2年生の時にデフリンピックトルコ大会に初出場しますが、その時は大会の雰囲気に圧倒され、思うような結果が残せなかったという京香さん。しかし、その悔しさをバネに「次の大会では絶対にメダルを獲りたい」という気持ちが強くなり、2022年のブラジル大会では見事金メダルをつかみ取りました。
「世界の舞台で金メダルを獲る」
そんな京香さんの姿は弟の丞さん、いとこの心温さんにも大きな影響を与えました。
丞さんは高校生の頃から本格的に陸上競技に取り組み、駅伝の選手として県高校駅伝にも出場し、区間2位の記録を残しました。高校卒業後は市内の会社で働きながら陸上競技に取り組んでいます。しかし、思うような結果が出せない時期が続き、一時は目標にしていたデフリンピックの出場を諦めかけたこともあったと話します。
丞さん:「出場に向けて練習していましたが、うまく体がついていかない時もあって、なかなかタイムを縮めることができませんでした。そんな時期が続いたので、デフリンピックの出場を諦めかけたこともありました。でも、姉が金メダルを獲った姿を見て『すごいな、かっこいいな』って感動し、自分ももっと頑張って一緒に出場するんだという気持ちになりました」
一度は挫けかけた思いを再び奮い立たせて練習を続けた結果、今年5月に行われたデフリンピックの選考競技大会では5000mで優勝、1500mで準優勝という成績を収めて日本代表に内定。念願だった姉弟そろってのデフリンピック出場を決めました。
今大会のデフサッカーの代表選手として、東北地方で唯一の選出となった心温さん。京香さん、丞さんとはいとこになります。
小学1年生からサッカーを続け、デフサッカーを知ったのは高校の頃。そのきっかけは意外なところからでした。
心温さん:「自分の試合の写真などを載せていたSNSを、デフサッカーの関係者が見つけてくれました。そこから知人を通じてつながりが広がり、デフサッカーの元日本代表の方とつながることができました。デフサッカーについていろいろ教えていただき、自分が日本代表を目指せることを知ったんです」
“音のないサッカー”とも呼ばれるデフサッカー。試合中、選手同士は手話やアイコンタクトでコミュニケーションを図り、審判は笛のほかにフラッグを使って合図を送ります。
心温さんが本格的にデフサッカーに取り組んだのは2024年の4月から。代表に入るために仕事をしながら練習を重ねて、自分のコンディションを整えていきます。その年の10月には日本代表候補に選ばれますが、なかなか試合に出られない時期もあったと話します。
心温さん:「苦しい時でも、やっぱり自分の長所を活かしながらアピールしていくしかないなって。上を目指して頑張ろうと決めたのは自分だから、とにかく諦めずに取り組んできましたね」
2024年11月から12月にかけてマレーシアで行われた「第10回アジア太平洋ろう者競技大会」では日本代表として出場。予選リーグ初戦こそイランに敗れるものの、選手同士で鼓舞しあって悪いムードを払しょくし、チームの雰囲気も上向きに。そこからは勝ち星を重ね、決勝戦で再びイランとぶつかるも3-1で勝利し見事優勝を果たします。
心温さん:「決勝もスタメンとして出られましたので、チームのために貢献できたという実感がありました。チームとしても自分としても『ここまでできるんだ!』という自信につながりました」
デフスポーツは音のない世界での戦い。
だからこその難しさや、注目すべきところがあります。
京香さん、丞さん、心温さんそれぞれに、デフスポーツならではの競技の特徴について聞きました。
京香さん:「他の競技では練習中は補聴器を付けることもできますが、水泳の場合は水に入るので練習でも必ず補聴器を取らなければいけないので、そこが難しいところですかね」
健聴者と一緒に水泳をしていた頃は、聴こえない環境での練習に大変さを感じたことも。
京香さん:「デフ水泳に出会ってからは、練習中に補聴器を外した状態でも手話でコミュニケーションができる環境になりました。練習にも楽しんで取り組めるようになったのは大きなことでした」
丞さん:「陸上競技も大会の規定があるので、本番中は補聴器や人工内耳(※聴覚を補うための医療機器)を外した状態になります。静寂の中で、体のバランスを崩さずに走り続けられるかというのが重要になりますね。体力だけではなく、目や頭もたくさん使うので人一倍努力しなければいけません」
聴こえない状態で長時間走ることは、体力はもちろん強い精神力が求められます。
駅伝では道路の白い線、競技場ではトラックの線を目安にして走り方のバランスを保つのだそうですが、真っすぐ走るのが大変になることもあると話します。
丞さん:「オリンピックやパラリンピックと違って、デフリンピックは聴覚に障がいがある人だけの大会になります。耳が聴こえない、聴こえにくい人たちが感じる世界というのがどういうものなのか、大会を通じて知ってもらえたら嬉しいです」
心温さん:「デフサッカーは、ルールに関しては通常のサッカーと変わらないですが、試合中は全員補聴器を外してプレーするのでつねに味方とアイコンタクトを取りながら、手話でコミュニケーションをとることが重要です」
通常のサッカーならファウルやオフサイドも笛の音で分かりますが、デフサッカーの場合はすべて目視での判断となります。体や頭、そして聴覚以外感覚をフルに働かせることが必要であり、そこが難しく、かつ競技としての醍醐味になります。
それぞれの競技に共通して「聴こえない」からこそ頭を使うことやコミュニケーション、視覚などの認知力、そして高いメンタルタフネスが求められることが3人のお話しを通して伝わってきました。
姉弟、いとこでの出場を決めた今大会。お互いに支え合い、また刺激を受け合いながらの挑戦となります。競技を続けていく中で大切にしていること、そしてデフリンピック出場に向けての想いを聞きました
京香さん:「一番大切にしていることは、周りに感謝する気持ちを忘れないことですね。今まで水泳を続けてこられたのは、家族や友達をはじめ、今まで支えてくださった方々のおかげです。今回は日本での開催なので、応援してくれた皆さんにメダルを獲る姿を見せることで恩返しがしたいです」
丞さん:「競技ではチームワークがなにより大切だと思っています。チームワークがあるからこそ個人の力も発揮できるということを、仲間同士でつねに意識し合い、お互いに助け合いながら練習してきました。今回が初出場なので、お世話になった方々への感謝の気持ちを胸に全力で挑みます」
心温さん:「今まで支えてくれた方々の力があったからこそ競技を続けることができたので、感謝の気持ちを忘れず、皆さんの期待に結果で応えたいです。そして日本のデフサッカーは年々レベルが上がってきていますので、今回のデフリンピックを通じてそのレベルの高さをぜひ知ってもらいたいですね」
競技への挑戦、そしてデフリンピック出場に向けての努力。京香さん、丞さん、心温さんそれぞれに出場にかける想いのかたちがありました。最後に、何かを頑張りたい、挑戦したいと思っている人に向けてメッセージをお願いしました。
京香さん:「障がいがなく生まれてきた人は『それが当たり前ではない』ということを、ぜひ心に留めておいてほしいなと思います。また、私も競技を続けていく中で大変さを感じる時期もありますが、そういう時こそ『今の自分に必要だからこそ起こっているんだ』と、前向きに考えるようにしています。皆さんも普段生活している中で辛い時期もあると思いますが、悪い方ばかりに考えず、この経験があるからこそ、これから良い方向に行けるのだととらえてほしいですね」
丞さん:「障がいを持つ人たちは、社会の中でいろいろなハンディキャップを感じることが多いと思います。だけど自分の気持ちを強く持って、やりたいことを前向きに頑張ってほしいです。私も諦めずに練習を重ねてデフリンピックに出場することができましたので、障がいを持った人たちにぜひ見てもらいたいという思いが強いです」
心温さん:「何かに挑戦する時は、まずは自分で目標を設定してほしいですね。うまく行かなくてもそこで諦めずに、どうしたらいいか考えることが大事だと思います。あと、同じ聴覚障がいを持つ人たちのことになりますが、聴こえないことを悪いことだと思うのではなく、自分の特徴としてポジティブに受け止めて、前に向かって進んでほしいです」
京香さん、丞さん、心温さんが出場する東京2025デフリンピックは11月15日にいよいよ幕を開けます。
デフリンピックでは、スタートの際にピストルではなくランプを用い、国際手話を使ってコミュニケーションをとるなど、大会ならでは注目すべきポイントがいっぱい!そして、選手を応援する際は手話をベースにしたオリジナルの「サインエール」を使って想いを届けます。
ほかの大会にはない「デフリンピックだからこそ」の発見や感動をぜひ一緒に体感し、酒田から世界へ挑む若き選手たちに熱い応援を送りましょう!
予選リーグ
11/14(金)12:00~ 日本VSイギリス
11/16(日)16:30~ 日本VSイタリア
11/18(火)16:30~ メキシコVS日本
決勝トーナメント
11/20(木)、11/22(土)、11/25(火)
※日程は変更となる場合があります。
予選
11/18(火)男子1500m
11/21(金)男子5000m
11/20(木)~11/25(火)
女子50mバタフライ
女子100mバタフライ
女子200mバタフライ
女子4×100mメドレーリレー
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