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2023年のオープン以来、女性にも入りやすいバーとして人気を集めているBAR Galleon お店を手がける夏輝さん・美香さんご夫婦に、開店のきっかけとお店に込めた想い、そして「これから」について聞きました。
August 12, 2025
カウンターの奥、慣れた手つきでシェイカーを振るのはBAR Galleonの店主にしてバーテンダーの今野夏輝さん。夏のかき氷をイメージした「ブルーハワイ」をはじめ、個性豊かな、それでいて親しみやすいオリジナルカクテル・モクテルの数々はすべて彼が手がけている。
2023年6月に開業し、今年で2周年目を迎えたBAR Galleon
夫婦でお店を運営している夏輝さんと美香さんにオープンのきっかけを訪ねてみたところ、夏輝さんの口からまず飛び出したのは、
「社長になりたかったんです」
という、シンプルながらも力強い言葉だった。
夏輝さん:「BAR Galleon を開業したのが39歳のときでした。40歳までに社長になるのがずっと夢だったので、店を出したら社長になれるなって(笑)。僕の最初のきっかけはそれですね」
美香さん:「私は酒田にコミュニティが作りたかったんです。みんなが気兼ねなく集まれて、女性だけでも行きやすい、そういう場所を作って酒田を盛り上げたかった。コロナ渦を受けて飲食業が弱っていたので、まちに人を呼び戻したいっていう想いがありました」
お互いの良いところも悪いところも知り尽くしているというお二人。
だからこそ、一緒に働くパートナーとしてお互いになんでも話し合える唯一無二の存在。「こんな場所を作りたい」という想いが重なって、BAR Galleonのオープンに向けて一気に動き出した。
BAR Galleonの名前の由来は、大航海時代に活躍した帆船「ガレオン船」から。
夏輝さん:「僕たちとしても、新しいキャリアのスタートだったので“船出”という意味を込めています。それと酒田ってやっぱり港町として知られているので、港にちなんだものとして船の名前にしました」
ちなみにガレオン船は海賊船としても有名である。
美香さん:「海賊ってお酒飲んで盛り上がっているイメージがありますよね。来てくれたお客さんにも海賊が船上で好き勝手に飲むくらいの気持ちで、肩肘はらずに楽しんでほしいです」
お客さんに楽しさを感じてもらうために船内…、もとい店内にはさまざまな遊び心が。
海を思わせるロイヤルブルーの壁面、カウンターの奥に飾られた舵は夏輝さんが父親から開業祝いとして贈られたものだそう。さらには海賊船長の肩にとまっていそうな南国の鳥のモニュメントや、海にある浮き玉、はては本物のウミガメのはく製まで。ちょっと眺めてみるだけでも、たくさんの「面白いモノ」が目に飛び込んできて飽きさせない。
テーブル席側の壁にある船のモチーフは、リサイクルショップで見つけて「これは店に飾るしかない!」と思わず購入を決めたのだとか。
そして、お店のあちこちには美香さんの好きなキャラクターたちもさりげなく顔をのぞかせている。「こっそり置いて、見つけてくれたら嬉しい」という言葉どおり、どこに隠れているのか探してみるのも、このお店の楽しみ方の一つ。
お二人の好きなもの、そしてお客さんをはじめ二人を応援する人たちから贈られたもので築き上げられた空間。美香さんが「一生完成しないお店にしたい」と話すように、地域の人とのつながりのなかでいろいろなものを取り込みながら、日々変化していく。
BAR Galleonはもともとあった店舗を改装して造られている。
以前のお店は、昼が喫茶店で夜はスナックとして営業していたので古き良き純喫茶の雰囲気が残っていた。
美香さん:「店内の造りが喫茶店みたいなので、入った瞬間、“想像していたバーとは違うな”と感じました。でも、かえってバーに入る敷居の高さみたいなものが薄れて、良い方向に転がるんじゃないかなって思いましたね」
カウンターとテーブル席の間にある木の仕切りを指さし、夏輝さんは言う。
夏輝さん:「このお店を選ぶにあたって、ここに仕切りがあるのがポイントでしたね。はじめて来るお客さんは、店員の視線が気になることもあると思います。仕切りがあることで、見られている感覚がなくなるのでリラックスできる。この造りは理想的でした」
木の仕切りとともに、どこか懐かしさを感じるランプシェードも以前のお店のものがそのまま活かされていた。
BAR Galleonのお店づくりで大切にしたのは「女性やバー初心者でも入りやすいこと」
美香さん:「目指したのはバーでありながらも喫茶店のように気軽に入れる場所です。窓があって外からでも店内の雰囲気をのぞけることもそうですし、暗いとどうしても閉鎖的な印象になってしまうので照明も明るくしています。また、バーでは煙草を吸われる方も多いと思いますが、私自身の経験としてお洒落をした服に煙の臭いを付けたくないというのもあって禁煙にしています」
「女性が入りやすいこと」は訪れたお客さんのSNS投稿や口コミで評判が広がり、今では女性客はもちろん男性客からも、そして若者からご年配の方まで幅広い客層に親しまれるお店となった。
話を聴きながら、ふと「そもそもどうして、女性やバー初心者が入りやすいことを大切にしようと思ったのか」という疑問が頭に浮かんだ。
率直に、この疑問を投げかけると…。
夏輝さん:「バー好きな僕からすると、敷居の高さや入るときの緊張感も含めてバーの魅力だと思うんです」
ちょっと背伸びして、カッコつけていく。非日常を体験する場所としてオーセンティック(正統派)なバーならではの良さがあるという。
夏輝さん:「だからこそ、そういう本格的なバーに行く前に、バーの楽しみ方を知るための“ステップアップ”みたいなお店があってもいいかなと。それがBAR Galleonを始めた理由でもありますね」
お客さんとの会話で、「酒田にバーが何軒あるのか分からない」という話を聞くこともあるという。
夏輝さん:「酒田には素晴らしいバーがたくさんあります。うちで一度バーについて知ってもらうことで、他のバーに行ったときにその魅力をより実感できると思います。このまちのいろんなバーに行く前の“練習”みたいな感覚で来ていただくにはぴったりじゃないかな」
バーでの作法やカクテルの種類、ウィスキーとバーボンの違いなど、他のバーではちょっと聞きづらいと思うようなことも気軽に聞いて欲しい。バーを愛するからこそ、その魅力をみんなに知って欲しいという、夏輝さんの心遣いが感じられる言葉だった。
「酒田で最初に訪れるバーにしたい」
「お酒を飲む人も飲まない人も気軽に集まれる場所にしたい」
そんなお二人の想いから始まったBAR Galleon。今年で2周年を迎え、女性客を中心に着実にファンを増やしている。
やりがいを感じた瞬間や、印象に残ったエピソードについてお聞きした。
美香さん:「まちに貢献できることや、人とのつながりが増えたことが嬉しいですね。そうしたつながりの中から『この人と何かを一緒にしたい』と、自分の意見でチャレンジする機会を作れるのもやりがいがあります」
夏輝さん:「僕はお客さんがメニューを見たときやドリンクを出したときに『かわいい!』とか『美味しい!』って声が聞こえてくるのが嬉しいです。もっと良いものを作ろうっていうモチベーションが上がります」
そして、ノンアルコールカクテル「モクテル」に力を入れたことで素敵な出来事もあったのだとか。
美香さん:「地域の子どもたちが集まるイベントでモクテルの屋台を出店しました。ジュースをかけ合わせて作ったモクテルを、子どもたちが券を持って買いに来てくれるんですよ。バーをやっていて、子どものイベントに呼んでいただけるとは思わなかったのでありがたかったですね」
夏輝さん:「これからは地産食材とのコラボメニューや旬のフルーツを使った期間限定ドリンクを出すとか、もっと地域の人たちと一緒にお仕事ができるようになりたい。今はそういった企画に向けて準備をしている段階です」
お二人の想い、そしてまちの人々の期待を乗せて、BAR Galleonの航海はまだ始まったばかりだ。
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